怪しい免疫療法になぜ患者は惹かれるのか?

2017-09-02
こんばんは

依然、台風15号が
勢力を保ったまま北上しています。

注意が必要です。


手術、抗がん剤、放射線ががんの3大療法として知られるが、これに近年、「第4の療法」として
期待が高まっているのが患者の免疫に働きかける「免疫療法」だ。しかし、免疫療法には、治療効果が
科学的に証明されたものと、明らかになっていないものがある。

だが、効果が証明されていない「免疫細胞療法」などの免疫療法が日本では高額な自由診療で
提供され、広く宣伝されている。それに患者が飛びついてしまうのはなぜなのか。
効果不明な免疫細胞療法を受けて亡くなった、すい臓がん患者の遺族に話を聞いた。

告知の時からこじれた主治医との関係
静岡県磐田市に住み、膵臓がんの患者・家族会「パンキャンジャパン」静岡支部長を務める
石森恵美さん(55)が、中学校校長だった夫、茂利さん(当時57歳)の異変に気づいたのは
2010年5月のことだ。夜、風呂上がりに着替えていた夫の皮膚が異様に黄色くなっているのに驚いた。

本人に痛みなどの自覚症状はなかったが、翌日行ったかかりつけのクリニックで
「深刻な病状だと思う」と告げられた。その翌日には紹介された地元の大きな総合病院に
即入院。精密検査を受け、入院3日目には肝臓や十二指腸にも転移した末期のすい臓がんと
告知を受けた。

「若い主治医だったのですが、告知の場所も個室ではなくナースステーションの片隅で
『手術はできない状態です。月単位の命だと考えてください』と重大なことを機械的に告げられたと感じました。
ショックを受けている私たち夫婦に何の配慮もなく、サクサクと用件を済ませるという印象で
特に夫は不信感を持ったようでした」

主治医を替えてほしいとお願いしたが、「チーム医療をしますから」とやんわり断られた。結局、夫はたった5ヶ月となった闘病中
最期まで主治医と信頼関係を築くことはなかった。

「『外泊していいですか?』と尋ねたら、『外泊して何が楽しいんですかね』と言われるなど
主治医の一言一言に傷つけられました。主治医への不信感も、私たちが代替医療に向かった
大きな要因の一つだと思います」
「冷静におろかだった」 聞きかじりの知識で代替療法を検索
当時、すい臓がんには2種類の抗がん剤しかなく、1種類ずつ使っていく治療方針が決まった。
二人の息子はまだ中学1年生と受験を控えた3年生。子供達には病状を伏せ、告知された日の夜
自宅に帰った石森さんは、一人インターネットで「すい臓がん 末期」などの言葉を検索し
何かできることはないか必死に探した。

「私はアナウンサーで健康番組もよく担当していたので、聞きかじりの医療の知識はありました。
検索ではアガリクスや免疫療法、フコイダンなどの代替療法ばかりが表示されます。
『病院と連携しているサイトで紹介されているから確かだろう』などと、今振り返ると冷静に愚かな判断をしていました」

最初に取り組んだのは、医師が勧める玄米菜食の食事療法と、海藻のヌメリ成分に含まれる
フコイダンのドリンク。本屋の健康本のコーナーにたくさん平積みされていたその食事療法の本を買い
「医師が言うのだから根拠がある」と信じた。夫が一時退院し、勤務先の学校に再び通えていた間も給食は食べさせず
手作りの弁当を持たせ続けた。

風水や「遠隔気功」も試した。そして、ネット検索で上位にあらわれる免疫療法を調べ始めた時
偶然、テレビのワイドショーで効果が証明されていない「免疫細胞療法」が「夢の治療法」として紹介されているのを見た。

「番組では医師も登場して効果があると話していました。紹介されていたクリニックをネットで検索すると
ホームページに効果があったというがん患者の事例が掲載されています。すい臓がん患者は一人しか
げられていなかったのですが、『でも一人は治ったんだ』と都合よく受け止めました」

費用は最低数百万円 「外車を一台買ったと思いましょう」
「少ない副作用で、体にやさしい免疫治療」とうたうそのクリニックは片道約1時間の名古屋にもあった。
問い合わせの電話で「テレビ放映されたので、予約は2週間待ち」「費用も最低数百万円かかる」と告げられ、夫と相談した。

「夫は『どうなのかなあ。お金も高いし』と心配しましたが、私が『男の人って一生のうち一度は外車に乗りたいって言うじゃない。
外車1台買ったと思いましょうよ』と説得しました。夫も抗がん剤を始めたばかりで気弱になっていた時だったので
『これに賭けてみよう』という思いになったようです」

とはいえ、夫婦で勝手に決めたわけではない。事前に主治医にも「免疫療法をやりたいのですが、先生はどう思われますか」
と相談した。食事療法などとは違い、新しい医療を受ける不安があり、クリニックから過去の治療データを持参するように
求められていたこともあった。

「主治医はフフンとせせら笑って、『データはいつまでに用意したらいいですかね?』と言っただけでした。
突き放された気がしました。もしそこで、『なぜ免疫治療をやろうと思うのですか?』と私たちの思いを聞いてくれ
『効果はないと思いますし、お金もたくさんかかりますよ』などと、医学的な立場からちゃんと相談に乗ってくれたら
思いとどまったかもしれません」

効果はなくても、後悔はしていない
夫が通った免疫細胞療法は、患者から血液を採取して免疫細胞を培養し、がんを狙い撃ちする機能を強化して体に戻し
がん細胞を攻撃させるとうたうものだった。臨床試験を行って効果が証明された治療ではなく、保険も適用されていない。

クリニックの医師は、「数十回分は培養した免疫細胞を注射することができます」と説明したが、結局、体調が悪化する方が早く
3回しか打つことはできなかった。3回でも合計約300万円。途中から、石森さんも「これは効果がないだろう」と
薄々気づいていたが、「後悔はしていない」と話す。

「夫は免疫療法のクリニックに行くのを楽しみにして、帰る時はいつもニコニコしていました。
こうした怪しい免疫療法を批判する医師は、『そんなお金があったら世界一周旅行でもしたらいい』とよくおっしゃるのですが
患者や家族が求めているのは、普段と変わらない日常が続くこと。免疫クリニックは医師から受付の女性まで
皆、夫の日常を支えるという姿勢を見せてくれました」

免疫クリニックの医師は、食事療法についてじっくり耳を傾けて、「奥さんは味も工夫してくれているんですね。
それなら食事が楽しみですね」と食生活も気遣ってくれた。病院の主治医が「食事療法? やりたければやったらどうですか」
と突き放したのとは全く違う態度だった。

いつも名前を呼んで迎えてくれた免疫クリニックの受付の女性は、最後になった3回目の受診の帰り
衰弱していた夫に、「運動会はいつですか?出られるように頑張りましょうね」と声をかけてくれた。

「教師の仕事が大好きだった夫は、『そんな風に言ってもらったよ』ととても嬉しそうでした。
受付の方まで夫という人間をみてくれていたのは辛い闘病生活の中で心が温かくなる思い出です。
夫の葬儀を済ませた後、私は主治医ではなく、免疫クリニックの受付の女性に『夫は運動会の話、すごく喜んでいました』
とお礼を言いました」

絶対に人には勧めない治療 押しとどめるために何ができるか
夫が亡くなって7年。石森さんは、免疫細胞療法について「効果はない」と冷静に判断し
相談に来る患者や家族に絶対に勧めることはない。

「悪徳商売をやっているからせめてもの罪滅ぼしに優しく対応をしようという医師もいるでしょう。
支払えなくなった患者に、『もうやることはないから出て行って』と見捨てたという話も聞きます」

しかし、高額な治療だからこそ、患者は自分たちなりに納得の上で選んでいるという。
なぜ科学的に根拠があり、その時点で最善と評価されている「標準治療」より、そちらを信じてしまうのか。

今、冷静になって振り返ると、その頃は、突然末期のがんと宣告され、「抗がん剤治療だけでは不安。もっと治療を受けたい」
という焦りや不安があった。そして、今、石森さんが治療の相談に乗っているすい臓がんの患者や家族も、そうした不安から
「上乗せの治療」「特別な治療」を懸命に探すという。

「『もしかしたら自分にだけは効くかもしれない、ここでできることを全てやらないと後悔する』と
藁にもすがるのが患者の心理です。主治医が反対するだろうからと内緒でやる人もいますが
すぐに決断できずに私たちのように主治医に相談する人も多い。その不安に主治医が応えてくれなかったら
患者や家族はよそに救いを求めてしまう」

そして、石森さんは、患者が怪しい免疫療法に流れていくのを押しとどめるためにまず
国が効果の証明されていない治療に規制をかけることが必要だと考えている。
さらに、主治医や医療者が患者や家族の不安に寄り添うことが大事だと訴える。

「まず、医師であれば根拠のない治療でも提供でき、こうした治療が受けられる状況が放置されているのが一番問題です。
そして、治らないがん患者の不安を和らげるのは医師の心あるコミュニケーション。医師が少しだけ謙虚に
『私の提供する治療では不安ですか?』とか『私の説明だとわからないところがあるのでしょうか?』と気持ちを聞き
一緒に考えましょうという姿勢を見せてくれたら、思い止まる人は多いのではないでしょうか」
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